仁胡ちゃんと爽斗くんの
会話が弾んでる。



まるであたしなんていないみたいだ……。



視線を落として鞄に荷物を詰め込む。




いくら、幼馴染で家が隣でも

爽斗くんの心には、全然手が届かない。



「莉愛、顔あげて」



にこちゃんとの会話を突然やめた爽斗くんに言われた通り顔を上げると、



「……そう。その顔」



爽斗くんは満足そうに目を細めているけど、
なに考えてるかさっぱりわからない……。


”その顔”ってどんな顔?


そう思ってスマホの真っ黒な画面に映したあたしの顔は、すごく険しくてびっくりした。



「……俺、莉愛のその顔はキライじゃない」



嗤う彼の、意図はわからないけど。


たぶん、嫌味だと思うけど。


戸惑いながらも「ありがとう」と言いかけたあたしの頬はぶちゅっとつぶされて、


ボっと頬が熱くなる。



「……毎日でも見てたいね、その顔」



鋭い視線と手があたしから離れた。


代わりに向けられたのは満足そうな顔。


「……帰るよ、莉愛?」


ふっと、口角のあがった微笑。


爽斗くんはたったこれだけで
あたしをときめかせてしまう。



「あ、爽斗くん待ってよ……!」



鼓動が、うるさい……。