莉愛 SIDE







ベランダに備え付けられた、あの新品の壁の向こうにはもう行けないのに、あたしは今も窓からそれを見ている。



『もう仲良くするのは無理そう』



お父さんにそう伝えた爽斗くんの声は、すごく苦しそうだった。



あたしたちは、小さなころから、いじめっこといじめられっこの関係で


こうなることの方が、ずっと自然だったんだろう。


だけど……。
マンションで、学校で、道端で……


あたしはいつも、爽斗くんを探してしまう。


一人で廊下を歩けば、後ろから『おい、根暗』って、ドンと乗っかられるんじゃないかって。


そんなことを期待して振り返るたび、爽斗くんのいない廊下が続いていた。