SIDE 雪本爽斗




「……っ、ゲホッ、ゴホッ」



昨日の夜から、隣の部屋で響いてる咳の音。


……風邪貰うほど、優心といたとか、お前頭おかしいの?


カーテンは閉まっていて、つまり面会謝絶にしてるとこ悪いけど。


――ピンポーンと朝いちばん問答無用にインターホンをおしたら、おばさんが出てきた。


「あぁー! ちょうどよかったサヤちゃん!」


目を輝かせたおばさんに前のめりで俺に言う。


「今日ね、東京へ泊りの出張で、わたし家をあけるのよ。でも莉愛が風邪ひいちゃったみたいで……申し訳ないんだけど、たまに様子うかがってもらえないかしら?」


あいつの風邪なんて昨日の時点で把握済みだし、


看病なんて……そんな当たり前のこと、わざわざ頼む必要なんてない。



「わかりました」


「ありがとうー!!! お礼はするわ! お土産何がいい!?」


「んー……、東京ななな」


莉愛がすきなやつ。


「りょうかーい! じゃあ行ってきまーす」