「よーし、姫茉、行こう〜!」

「うんっ!」

5時間目の授業が終わり、クラスのみんながリレー練習のために次々と教室を出ていくなか、

私も羽芽ちゃんたちに名前を呼ばれて、急いで席を立つ。

今日は2回も体操着に着替えないといけなくて、ちょっぴり大変だけれど。

6時間目に座って授業を受けるよりもうんとまし。

「さっきの体育、着替えなければよかった〜」

なんて呟きながら教室を出ていく和子ちゃんたちの背中を追いかけようと、踵を返した瞬間。

視界の端に見えた影に足が止まった。

ゆっくりと振り返って、私の席の後ろに目を向ける。

……寧衣くん。

早く教室出ないと、次の時間遅れちゃうのに。

彼がこんなふうに机に突っ伏して寝ているところなんて見たことがなくて、意外すぎてびっくりしてしまう。

起きる気配が全くない。

授業だっていつも真面目に聞いてるイメージだし、休み時間だっていつも友達に囲まれているから。