「ここ」

「わー、すごい高級そうなマンションだね……」

「そーかな?普通だよ」

いやいや、全然普通じゃないよ……。

寧衣くんに連れてこられたのは、彼の家であるタワーマンション。

いいのかな……私みたいなのが寧衣くんの家に入っちゃっても。

不安になりながらも、今の私には彼について行くことしかできなくて、

ちょこちょこと隣を歩くので精一杯。

慣れない空間に少し緊張しながら一緒にエレベーターに乗り込んで。

寧衣くんが30のボタンを押した。

「えっ、30階?!」

「あ、うん。浅海さん高いところとか苦手だった?」

「へ、ううん!全然大丈夫、だけど……その、最上階なんだね」

「あぁ、うん。まぁ。親がね仕事人間で。だからそんなカチコチにならなくて大丈夫だよ。誰も家にいないから」

「え!?い、いないの?!」

「うん」

「は、そ、そっか……」

そりゃ、家族の方がいるのも緊張するけど。

寧衣くんと彼の家でふたりきりっていう方がすごくドキドキしちゃうよ。