王宮メイドの仕事は、決して楽なものとはいえない。仕事内容自体は難しいわけでも特別な技術がいるわけでもないのだが、この仕事は王族と直接関わらねばならないために精神的な圧がすごい。

 しかも同僚のほとんどは、パッとしない中級下級貴族の令嬢たちが、確率は低くとも王子に見初められるかもしれないという親の思惑のもと送られてくる者たちだ。

 実家では大切なお嬢様として甘やかされて育てられてきた彼女たちが完璧に仕事をこなせるということはもちろんなく、でもプライドだけは高いのだから面倒である。そのような彼女らと協力しなければならないというのが、仕事を大変にする要因の一つであったりもする。


 それでも休みはきちんとあり、庶民にとってはまあまあ高額の給与が支払われるのだから、前世で働いていたブラック企業に比べれば天国のようだなとニーナは思う。

 今日はその休みで、昔いた孤児院の院長の元を訪れていた。

 人の良い翁は、疑うことを知らず、騙されて孤児院の建物を手放したことがある。ニーナは思い出の場所を自力で取り返そうと様々な手を使ったが、結局は愛する第三王子・デュランの手によって買い戻された。