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中学三年生の夏。朝の全校集会の最中、チョコを口で溶かしていたら、匂いで周りにバレてしまった。

「ちょっと環、何してんのよ」

親友の夏実が注意する。

「だってお腹減ったんだもん」

前にいた悠介(ゆうすけ)が、後ろを見ずに「くれよ」と手を伸ばす。

包みのゴミを渡すと、悠介は軽く舌打ちした。

いつもの全校集会も、今日は雰囲気が違う。

それは今日が、七月二十日だからだ。

「ちょうど六十年前の今日…」

喪服を着た校長先生が話し始める。

「学校の近くの海で、水泳の授業をしていたところ、突如海が荒れ、授業に参加していた一名を除く70名の命が失われました」

子供の頃から何度も聞いた話だ。

当時は幽霊の仕業とか、色々な噂が出たけど、原因は未だによく分かっていないらしい。

「…では、犠牲となった子供たちを悼み、黙祷」