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小六のバレンタイン。

「やっぱり止めようよ。もし失敗したら、今までみたいにしゃべれなくなっちゃうし…」

「大丈夫だよっ!
環なら絶対うまくいくって!」

手には前日、親友の夏実(なつみ)の協力で作ったチョコ。私は生まれて初めて、告白しようとしていた。

「ほら! 悠介(ゆうすけ)君来たよ!」

夏実が背中を押す。悠介と私は、生まれた日も、病院も、幼稚園も同じで……要するに幼なじみってやつだ。

「環、ちょっといいか?」

その日、私が何度もためらっていると、思いがけず悠介から私を呼び出した。

誰もいない、閉鎖中のプールだった。

「ずっと言いたかったけど、言えなかったことがあるんだ」
「えっ?」

悠介の言葉に、胸が高鳴る。もしかしたらという期待で、自然と笑顔になる。