ついさっき殺した環(たまき)の死体と目があった気がした。

右手は濡れたスカートを握り、口はあんぐりと、目はぼんやりとしている。

一瞬の吐き気のあと、血のついた斧を、ぎゅっと握る。

『隼人(はやと)。お前だけが頼りだぞ』

親父の声が頭に響く。冷たい波が踝をなでる。

斧を引きずりながら海辺を歩くと、祠の前で祈る、例のババアを見つけた。

ただひたすら、お経を唱えている。

あれほど凄まじかった環の断末魔も、こいつには聞こえなかったのだろう。

……ちょうどいい。

背後に立つと、俺は斧を振りかざした。