ムクっとベットから体を起こす


…ああそうだ

その夢だ

懐かしい中学の記憶

あの時の、定期を拾ってくれた子が

まさかね
自分の同居相手になるなんて

人生とは何があるか本当にわからない


そうだ

天宮梓の言っていたバスの男の子とは

俺のこと。織原真琴のことだ


世間は狭い
本当に、狭いもんだ

もう使えないのに何故かとってある黒い定期

自分の机の上に置いてある


正直、最初に見た時はわからなかった

あの時より全然綺麗になってる

もともと異国の雰囲気をもつ変わった感じのイメージだったけど

あの頃に比べて大人っぽくなった

女子の成長ってすげぇな

寝起きの頭でそんな呑気なことを考えながら学校へ行く支度をする


そういやそうだった

一週間だけ
一緒にバスに乗った女の子がいた

次の週、何気に楽しみにしていたバスの時間

だけど、その子はいなくって

休みなのかなって思ったけど

その次も、そのまた次の日も

彼女は現れなかった


夏の暑さが俺に見せた幻覚かもなんて思ったくらい

だけど…

幻覚じゃなかった

彼女はいた


彼女も、俺のことを覚えていた


『恋でもしてたんでしょうかね』


…だな

本当にな