異動になった川村からは

時々 連絡があった。


最初に電話があったのは 8月。

「元気か?寺内。」

川村の声は 明るくて 俺は 少し安心した。

「おう。少しは 慣れたか?」

「ボチボチな。こっちは 取引先が いちいち遠くて 参るよ。」

「へえ。車で回るの?」

「ああ。完全な車社会だから。車じゃないと どこも行けないよ。」

「そうなんだ。通勤も車?」

「もちろん。支店は 駅から遠いし。俺も こっちに来てすぐに 中古車買ったよ。」

「運転は 大丈夫なの?」

「まあね。上手いもんだよ。そのうち 遊びに来いよ。俺の車に 乗せてやるから。」

「ハハハ。遠慮しておくよ。川村こそ たまには こっちに来いよ。」


川村との会話は やっぱり 気がおけなくて。

俺は 自然と笑顔に なっていた。