「俺さ。早苗と別れたよ。」

居酒屋で 向かい合って 

生ビールを 一口飲むと 川村は言った。


「えっ?どうして?」

「クリスマスに 俺が期待してたこと 知ってるよな?でも 早苗に拒まれて。俺 言っちゃったんだよ。 ” 俺のこと 何だと思っているんだ ” って。」

「それで?」


早苗は その後 俺の所に来たのか…


「その時 早苗は  ” 結局 身体が目的なの ” って 言い返して。俺 そんなつもりなかったけど。でも 好きなら 抱きたいって思うの 普通だろ?」

「川村 焦り過ぎてたんじゃないか?」

「そうか?でも 付き合って 半年以上 経っているのに。もっと知りたいって思う俺 おかしいか?」

「身体の関係があれば 深く知ってるとは 限らないだろう?」

「そうじゃなくて。好きだから 抱きたいって思うんだろう?早苗だって 俺を好きだったら 抱かれたいって 思うはずだろう?」

「岩瀬さん 川村が告白した時 まだ誰とも 付き合わないって 言ったんだよね?それを 川村が 強引に粘って 付き合うようになったんじゃない?もっと川村を 好きになってもらわないと 駄目だったんだよ。」

「俺 自信がなかったんだ… 早苗って 反応が薄くて。何考えているのか よくわからなくて。だから 抱けば 俺の方を 向いてくれると思ったんだ…」

「岩瀬さんは そういうタイプじゃ ないだろう。」

「そうなんだ。だから 早苗に惹かれたんだけど。やっぱり 俺の手には 負えなかったよ。」


俺は 早苗が 傷付いてないか 心配になった。


「岩瀬さんも 別れることに 納得したの?」

「ああ。早苗から 別れようって 言われたんだ。これ以上 付き合っても 俺の要求に 応えられないって。」

「えっ?川村 それでいいのか?」


早苗から 結論を出したことに 俺は驚いた。 


「もう 仕方ないよ。やっぱり俺には 早苗みたいなタイプは 無理なんだ…」


そう言って ビールを煽る 川村。


そんなに簡単に 諦めるのなら

どうして 付き合ったりしたんだ。


川村が 早苗を好きだって 言わなければ

俺は 早苗に 告白していたかもしれない。


今更 タラレバを言う自分を 

卑怯だって 思いながら。


でも 川村と早苗が 別れたことは

俺は 正直 嬉しかった。


たとえ すぐに俺が 告白できなくても…