ミレイナは自分の足首に巻かれた包帯を見つめ、ため息をつく。

「なんでこんなことに?」

 昨晩、 ミレイナはジェラールにより保護されて王宮にとんぼ返りした。
 今度は人間として。

 魔獣に襲われて負った怪我はジェラールから指示を受けた医師が手当てしてくれた。そして、今は王宮の端にある一室をあてがわれて、そこにいる。

 ミレイナは途方に暮れて外を眺めた。

 窓から見える庭園は手入れが行き届いており、芝生が敷かれている。
 そして、庭園の一角には以前ジェラールの部屋にも飾ってあったロゼッタの花が咲いているのが見える。ロゼッタの花は、前世の世界のハイビスカスによく似ていた。
 その合間を、男女が楽しげに歩いている姿が遠目に見えた。二人とも、とても幸せそうな笑顔を浮かべている。

「デートかしら?」

 幸せそうな光景に、笑みがこぼれる。
 しばらくその光景をぼんやりと眺めていると、背後のドアの向こうから足音が近付いてくるのが聞こえ、ミレイナはドアの方を振り返った。
 じっと見守っていると、足跡はドアの前で止まり、トントントンと規則正しいノック音が聞こえる。

「どうぞ」