ミレイナは半ば泣き出したい気分だった。

(な、なぜこんなことに?)

 こんな状況、戸惑わずにはいられない。
 自分を膝に乗せて背中を撫で、蕩けるような笑顔を向けてくるのは、完璧までに整った顔立ちのイケメンだ。

 筋の通った高い鼻梁に薄い唇。男性的な凜々しさを持つ鋭い瞳は、爽やかな空を思わせる水色。青みがかった独特の銀髪をさらりと流し、まさに生ける彫刻とでも言おうか。

「どうした、もう食べないのか? よし、俺が食べさせてやろう」

 仕方がないと言いたげに、口元にカットしたラングール人参が差し出される。その匂いに釣られて思わず一口囓ると、目の前の人はそれは嬉しそうに破顔した。

「いい子だ。もっと食べるといい」

 可愛くてたまらないと言いたげな美しい水色の瞳。大きな手で頭を優しく撫でられ、その手はそのままミレイナの体のラインをなぞる。