水族館デートのあと両親に連絡を取り、慧さんも含めて全員がそろう第四週の土曜日に家に帰ることにした。離婚する意思を伝えに行くために。

しかしその日を週末に控えた午後、オフィスにいながら約十日前の水族館デートを思い返して、私はひたすら後悔していた。


「あー……私って、ほんとバカ。意気地なし」


作業が一段落したところで小休憩を取っている今、私は三人掛けのラウンドテーブルに突っ伏した。

日が経って冷静になり、離婚が迫ってくるにつれ、あのときなぜキスをしたのかをきちんと聞いておくべきだった、という思いが大きくなってきているのだ。

慧さんの言葉次第では、離婚を回避できる可能性もゼロではなかったはず。なのに、どうして私は逃げてしまったんだろう……! 今や完全にタイミングを逃してしまって聞けそうにないし。

左斜めに座っている麻那は頬杖をつき、テーブルにおでこをくっつけてぶつぶつと呟く私に苦笑する。


「離婚を切り出すまでは潔くてよかったのにねぇ。や、よくないんだけど」
「あのときの勢いが弱まってきている……劣化した水道の水の出方くらい弱まってる」
「あはは。ひとちゃんってほんと恋には不器用なんだね」