シュレッダーにかけると記憶が消される。


そんなことあるわけがない。


だけど、あれだけ憔悴していた由香里はシュレッダーを使った瞬間から元気を取り戻し、失恋の記憶も完全に消えていた。


「あたしもあのシュレッダーを使った……?」


夜、1人になって布団の中で呟くと、また恐怖心が湧きあがってきた。


どうにかシュレッダーに関する記憶を呼び戻そうとするのだけれど、うまくいかない。


なにか思いだせそうなのに、思い出すことができない不愉快な感覚ばかりが付きまとう。


「あたしはD判定で……それが嫌でシュレッダーを使った。だけど試験を受けたっていう記憶は残ってるから、A判定の用紙が出現した……?」


あたしは今でもA判定の用紙をしっかり持っている。


間違いなく、それは実在しているのだ。


でも由香里たちの話を総合して考えると、その用紙だって作りものなのだ。


考えれば考えるほど非現実的で、頭が痛くなってくる。


あたしはうめき声をあげて、頭まで布団を被ったのだった。