「たぶん、あたしはこのシュレッダーを使ったんだと思う」


すべてを話し終えたあたしは、浩太を祖父の部屋に案内していた。


「これを使ったら記憶が消える……か……」


浩太は布を取ったシュレッダーを見つめて不思議そうな表情をしている。


「うん。由香里は本当に振られたことを忘れたの。だけどその時に、このシュレッダーを使ったことまで忘れてしまうみたい」


「だから敦子もなにも覚えてないってわけか」


浩太は呟いて頷いた。


「普通のシュレッダーに見えるけど、確かになにか惹かれる雰囲気があるな。思わず使いたくなるような」


「だよね? あたしも、それは感じてるの」


こうしてシュレッダーを見つめているだけなのに、どんどん引き寄せられそうになる。


「もう使わない方がいい」


浩太に言われた瞬間、以前もそう考えていたことを思い出した。