今朝はジメジメとして蒸し暑い朝だった。


祖父と自分の分のパンを焼き、ぼんやりとテレビを見ながらそれをほおばる。


祖父は2人分のコーヒーを淹れて、あたしの前に置いてくれた。


「最近物騒なニュースが多いよね」


あたしはテレビに視線を向けたまま言った。


ニュース番組では都心で放火魔が相次いでいると、深刻そうな表情で伝えている。


「なにかひとつ事件が起これば、それに便乗して事件が増えていくときがあるからなぁ」


今年70歳になったばかりの祖父はあたしの前の席に座り、コーヒーを飲んで大きく息を吐きだした。


「あれって真似してるんだよね」


あたしも祖父が淹れてくれたコーヒーをひとくち飲む。


コーヒーは昔から苦手だったけれど、祖父が淹れてくれたコーヒーだけはなぜか飲めるようになった。


祖父が言うには『愛情を込めているから』らしい。