「…そろそろ陽が沈むな」



ホテルの一室、スイートルームから見える空を窓辺で望む。

陽が落ち、すっかり薄暗くなった空を。


「日没時刻って何時だっけ」

「17時52分」

「…じゃあ、もうそろそろか」


スマホのトップ画面に表示された時刻を確認すると、スーツのポケットに入れて窓辺から離れる。

ソファーに深く腰掛けている、兄貴分の元へと向かった。



「夏輝はさっきから落ち着かないね。着慣れないスーツでも着てるから?」



的外れな冗談を言ってくる兄貴分に、彼ーー竜堂夏輝は「ちげーよ!」と、口を尖らせて反論する。



「こんな場面、久々だから緊張してんの!そりゃあ、哲太兄ちゃんは札幌にいるから菩提さんに呼ばれてちょいちょいお手伝いしてるんだろうけど?俺らは久々に札幌に戻ってきたから、バトルも久々」

そんな反論が滑稽に思えたのか、夏輝の姉の同級生である幼なじみの兄貴分ーー川越哲太は、思わず失笑してしまう。

「何言ってるんだ。先月、桃李の帰国に合わせて帰って来た際に、なずなの依頼に着いてっていっちょ暴れてきたんだろ?」