雨がザーザーと降るこの街で、私の居場所なんてなかった。

暴力彼氏から逃げるようにして家を出て、お金も服も持って来る事を忘れた私に、行く場所もない。


「大丈夫ですか?」

おぼつかない日本語。

直ぐに外国人だって分かった。

「大丈夫です。」

「大丈夫のように、見えない。」

放っておいてと思ったけれど、私の様子を見て声を掛けて来たこの人には、通じないだろう。


「家、どこ?」

「ない。」

「ない?仕事、何してるの?」

「料理人。でももう働けない。」

「だったら、僕の国で料理人する?」


それが、私の人生を変えた一言だった。