昼休憩が1時間くらいあって、色んなこと話して仲良くなった。

「へぇ...高校退学させられちゃったんだ...。私はまあ、勉強くだらないからやめちゃった感じだけどね。」

「それで有名音楽プロデューサーって、
すごいね...。」

「まだそれほどでもないよ。まあでも小さい頃からそういうのは憧れてて、学校行きながらでも色んな人に弟子入りしてノウハウは学んできたつもりだったの。
でも、まあ高校行くのは義務じゃないし、
好きなこと専念しようと思って。」

「凄い行動力...。」

「まつりもすごいじゃん。
一生懸命頑張ってるの見たよ。」

「ありがとう。」

頑張りの度合いが違ってくるような気はするけど...。

「ところで、まつりって佐伯雅さんのことファンって言ってたよね?」

「うん。ずっと前からファンなの。」

「いきなりだけど、もし...。
私が佐伯さんを歌手にしたら...嫌?」

「か、歌手!?
そ、そんな素敵なこと...!」

「いい?」

「うん!もちろん!
だって、そしたら佐伯さんの美声がきけるし、お顔も拝見できるし...!」

「よかった。
私、結構前から佐伯さんを歌わせたかったの。プロデューサー名乗る前から歌手としてもデビューさせたいなって勝手に思ってて...。」

「いいと思う。佐伯さんが歌ったらまた虜になっちゃうな...。
そういえば、佐伯さんって他の声優さんとは違って顔とか出さないし、他の仕事はしないよね?」

「うん。
私も何度か会いたいって事務所に連絡してるんだけど、いつも曖昧にされちゃってるの。」

「マカでも会えてないんだ...。」

「佐伯さんがどんな人かって、知ってる人はやっぱり少ないみたいだよ。
公式プロフィールもほとんど公開されてないし。身長は高めで、今はまだ若いってことぐらいかな?」

「何歳なのかも分からないの?」

「分からない。20代くらいなのかな?
一回だけ地方のラジオに出演したことがあって、その頃はまだ声変わり前ぐらいだったって噂も。データ残ってないらしいけど。」

そう。

佐伯さんにはなんといっても謎が多すぎる。

アニメのイベントで声優が集合するときも、佐伯さんはいない。

ラジオやテレビ、雑誌の取材などといった声優以外の仕事もほとんどというか全く受けない。

グッズも演じてるキャラのものはあるけど、佐伯さん自身の公式のものは販売されていない。

SNSなどの情報発信も本人はしていない。

ただ、アニメや海外ドラマの吹き替えにだけ登場し、佐伯雅と文字表記が出るだけ。

そんなわけで、実は佐伯さんは人間ではなく、ロボットか何かなのではないかといった噂までながれ、都市伝説としてテレビ番組などでめちゃくちゃ取り上げられたことがある。

それには事務所が反応して、ロボット説否定してたけど。

そういうわけで、佐伯さんはそういう意味でも人気で、知名度は高い。

声優何それ美味しいの?みたいな人でも佐伯さんの都市伝説はなんとなく知ってるみたいなことも多いそうだ。

「でも、そんな佐伯さんが顔出して歌を歌ってくれるなら、私どんなことでも出来ちゃうかも。」

「それほんと?」

「うん。」

はじめはそんな感じで笑って言ってただけだったんだけど。

やっぱりマカの行動力は並外れてて...。