「それでは、皆様のパートナーになる人の発表を行います。」

入学をして、1ヶ月ほどが経とうとしているある日、私達1年生全員は、体育館に集められた。整列も点呼も全くなく、体育館は人で溢れかえっている。ざっと300人近くはいるだろう。前に立って話をしているのは、校長先生だ。
いよいよ、この日がやってきた。
今日、私は将来結婚する可能性が非常に高い男性と出会うのだ。なんだか全く実感が無い。

「藍ちゃん、いよいよだね。緊張するね…!」

隣にいる同じクラスの“ももちゃん”こと桃野奏風(もものそよか)がそう言った。ももちゃんとは小学校が同じ親友だ。とても仲が良かったから、中学で離れてしまった時は悲しかったけれど、またこうして同じ学校へ通うことができて、とても嬉しい。

「そうだね。」

この学校は、入学して1ヶ月が経つと、異性のパートナーが発表され、強制的にその相手と恋人のような関係にならなくてはならない。
パートナーを決める元となるのが、入試の際に、その場で作成する自己PRだ。まあ、自己PRと言っても、一般の高校とは違い、無理に自分自身のことをアピールする必要はない。寧ろ、本来の自分をありのままに書いた方が良い。そこで書いた自己PRは、高瀬AI研究所でAIに全ての情報を読み込まれる。その後、得意なことや苦手なこと、もっと言うと文章の書き方や言葉遣いや接続詞の使い方までをAIが分析し、一人一人の最も相性の良い相手を割り出す。そして、相性ランキング上位150位までに入った人が入学を許される。
私は、スマートフォンにある、メッセージアプリを開いた。
どうやら、パートナーの発表は、スマートフォンのメッセージアプリで行われるようだ。この学校の公式アカウントから私個人のメッセージアプリへ、相手のアカウントが紹介されるらしい。