最近、ハルバート様はお仕事を早めに終えるのか帰宅が早くなった。

 それはひとえに、王都を案内すると言ってくれて一緒に出掛けた日に約束した子犬がやって来てから。

 どうやら、いままでは乗馬用に馬は飼育していたものの、世話は専用の人物に任せていたようで犬を飼うのは初めてだと言っていた。

 ハルバート様が、友人の家から譲り受けてきたという子犬は、私が両親と同じ時期に亡くした犬と同じ犬種に似た色合いの毛の子犬。
 あまりにも似ていたし、あの子は長生きしたから同じように元気に長生きするようにとあの子と同じマロンと名付けた。

 マロンは賢い子で、トイレもすぐに覚えたし、お座りも待ても上手にできる。
 遊びに夢中になる元気さもあるが、こちらの言うことをしっかり聞いてくれるいい子だ。

 マロンのおかげで、私は庭で一緒にボールで遊んでみたり、散歩したりとここに来てからも少し塞いでいた気分も改善されて、自然と笑みが浮かぶことが増えた。

 動物はやはり、気持ちを温かく優しくしてくれる。

 そして、ハルバート様もマロンの可愛らしさにすっかりメロメロになっているのか、帰ってきたときに私とマロンが庭園にいるとマロンと遊ぶようになった。

 マロンも、楽しそうにしている。
 そんな様子の時のハルバート様は歳が離れていることを感じることもなく、自然と話せていることに気づいた。

 マロンのおかげで、ハルバート様と過ごす時間も増えて人となりも分かるようになってきた。

 ハルバート様は気遣いのできるスマートな男性で、社交界で浮名を流していたのも納得できる。
 仕事の方も、優秀らしく自領の商業や交易も上手くいっているという。
 
 そんな地位も、容姿や人柄にも問題のないハルバート様が私と婚約してこのまま結婚してもいいのだろうか?

 つい、そんな風に考えてしまう。
 両親を亡くした私は、元貴族令嬢という微妙な立ち位置なのに……。
 実家の屋敷も領地も、私が結婚か婚約者がいたらそのまま私が引き継ぐこともできたが、なんの後ろ盾も無かった私は家督を叔父がとったのを機に、そのまま父の友人であるシャロン公爵様のお屋敷でお世話になっている。