シャルロッテにようやく彼女の生家である辺境伯家のタウンハウスを買い取って準備していることを伝えた。

 それは、だいぶ準備が整ったことを意味している。今日の買い物の帰りに寄るつもりでいたからだ。

 貴族街の中ほどにある、その屋敷は落ち着いていて優しい雰囲気のタウンハウスだった。
 公爵邸に比べたらやや狭いが、新婚の二人で過ごすには十分な広さがある。

 そしてなにより彼女にとって、そこは思い出の場所だと思う。
 この王都で今後暮らすことになる彼女に、少しでも思い出のある場所を残してあげたかったのだ。

 辺境伯はやはり金銭的余裕がないのだろう……。
 前辺境伯が手放さずにいたタウンハウスを爵位を継ぐと同時に手放すとは……。

 しかし、そのおかげでこの王都で彼女にとっての大切な場所が出来たので良しとする。

 その話を出したとき、驚いた表情の後にシャルロッテは嬉しそうに微笑んだ。

 花が綻ぶような彼女本来の物であろう微笑みに、こちらも嬉しくなる。
 やはり笑った顔は美しくも愛らしく、ずっとそうあってほしいと思うほどに惹かれる。

 そうして話している間に、王都で我が家がよく利用する宝飾店へと到着した。

 シャルロッテをエスコートして馬車から降りる。

 ここは高位貴族や王族も利用する宝飾店で、デザイナーの腕が良く髪飾りからティアラに首飾りや耳飾り等どれも一級品だ。