退屈な授業が終わった放課後、未来は図書室で本を借りて読んでいた。読んでいるのは恋愛小説の短編集だ。

『好いとうよ』

あの時の帆高の言葉や瞳を思い出し、未来は頬を赤く染める。恋愛など自分にはもっと遠い世界の物語だと思い込んでいた。

「未来〜!こんなところにいたんだ」

顔を真っ赤にしている未来に、図書室にやって来た友達が声をかける。未来は「うん。本を借りてた」と慌てて本をかばんの中に入れた。

「あれ?恋愛小説?いつも動物関係の本しか読まないのに……」

「ちょっと読んでみたくて……」

帆高の告白をきっかけに、少し恋愛のことを勉強してみようかなと思ったのだ。数学や英語の勉強は嫌いだが、恋愛の勉強なら楽しく感じている。

「へえ〜……。もしかして、未来って好きな人でもできた?」

友達にそう言われ、未来は「ち、違うよ!」と否定する。帆高からは告白されただけで未来は何も思っていない。それでも、目の前で友達はニヤニヤしていた。