「杏菜ちゃん、休憩入っていいよ〜」

「はい、ありがとうございます!」

穏やかな月曜日の午後、カフェで働く北山杏菜(きたやまあんな)は店長に言われ休憩室へと向かう。まかないは何を食べようかと考えながらドアを開けると、カフェで働く三人の女性がスマホの中の写真を見て目を輝かせながら話しているところだった。

「みんな、どうしてそんな目を輝かせてるの?」

杏菜が訊ねると、「先輩!これ見てくださいよ!」と目を輝かせたまま一人の女性が写真を見せる。そこには国民に向かって手を振る豪華な宝冠をかぶった男性がいた。アンバーの瞳にブラウンの髪をした美しい男性だ。

「かっこよくないですか?クラリネッタ王国のダミアン王子です!日本に今旅行に来ているみたいでネットで「王子を見つけた」って投稿もよくされてるんですよ!」

女性の言葉に杏菜の瞳も輝く。しかし、それは華やかな顔立ちの王子に向けられたものではなかった。