蓮翔と付き合い始めてから、1ヶ月が経った。

昔より優しくなった蓮翔。
大事にしてくれるし、私の考えも聞いてくれる。
どんどん蓮翔を好きになっていく。
蓮翔も私のこと好きだと言葉で言ってくれる。
それが何より嬉しい。

蓮翔はSHINEの雑誌でかなり人気になり、ファンもいるくらいだ。

だから、私が蓮翔と付き合っているのは、秘密だ。蓮翔は、気にしないと言ってくれたのだが私が無理だった。

もっと綺麗にならないと。蓮翔の隣りに似合う女にならないと。

お互い多忙でこの1ヶ月で会えたのは、2、3回程度。一緒に食事をしただけだ。みんなどうやって付き合ってるの?こんな感じなのかな?何もかも初めての私はどうしたらいいのか、わからなかった。

だからといって、蓮翔も忙しいのか頻繁に連絡がくるわけではなかった。

今日も普通に仕事をこなして、いつものように家に帰る。

「蓮翔は、何してるのかな?」

独り言を言っては、はぁ~っと、ため息をする。
蓮翔は、忙しいから、連絡するのは、迷惑だろうし……。会いたいけど、我慢するしかないのかな?

そんなことを考えてるから食欲もない。
明日は久しぶりの休み。だけど、平日だから蓮翔は仕事。蓮翔はちゃんと休んでるのかな?食事もしてるのかな?

うじうじしてるのは、私らしくない。思い切って電話してみよう。

スマホで蓮翔の名前を画面に表示させた。

「よしっ」

私は気合いを入れて、通話ボタンを押した。

プルルルルル……。

プルルルルル……。

やっぱり忙しいのかな?

しばらくコールして……

「はい……」

低い声で怒っているような蓮翔。

「……私、秋帆。今、忙しい?」

「……あぁ、ちょっとな」

なんか気まずい……。
あ~っ、もう電話なんかしなきゃよかった。

最悪だ。

「珍しいな。お前が連絡くれるなんて。何かあったのか?」

さっきの口調とは違い、優しく話しかけてくる。だから我儘を言ってしまいたくなる。

「……蓮翔」

ヤバい。私、泣きそうだ。

「ん?どうした?」

「私……」

「蓮翔さ~ん、電話まだ時間かかりそうですか?かりん、待ちくたびれちゃった~」

「あぁ、今行く」

ど、どういうこと?かりんさんって?

頭から混乱してる。心の奥がバリバリと何かが割れたように砕けたのがわかった。

「秋帆?」

心配そうな弱々しい声になる蓮翔。

「ごっ、ごめん。忙しいのに電話なんかしちゃって、じゃぁ、またね。バイバイ」

私は慌てて電話を切った。

蓮翔が何か話していたが、頭の中がもうパニックで私には何も聞こえなかった。