★★★










この世の中。

何が正しくて何が間違っているだなんて、わからない。




でも、小さな箱の中では《正義とは何たるか》が決まっていて。

その《正義》を振りかざせるヤツも決まっていて。




『お?…橘の弟の方だ。NTRの』

『わっ。マジ?ダサっ』

『相手があの頼智さんじゃなー?実の兄?…ぶっ』





そいつが白と言ったら、黒でも白。

白も《闇》、黒も《光》となる。




…薫と兄貴の件があってから。

はっきり言って、俺は笑い者になっていたと思う。

指を差されまくっていた。



あの直後、学園のカフェテリアでカトレア会のみんなとお茶してると、俺を見かけては陰でこそこそ…聞こえてんだよ。

本当に気分が悪い。



『…ちょっと。何なのあいつら、もう!』



その様子を目の前で見ていた、隣に座っている、大手新聞社の社長の孫・紅愛(くれあ)が、あからさまに不快な態度を見せる。

ムッとした表情をしていた。



『ひどいよ。伶士は被害者なのに。何も悪いことしてないのに、何で後ろ指差されなきゃならないの?』

『いいよ、別に』

『何でよ!悪いことした二人は、批判どころかもう公認カップルみたいになっちゃって!何で誰もあの二人を批判しないの?ひどいよ!』