★★★







「早速行くか」



校内の道案内は、俺の役目。

そう思って声を掛け、前に出るが。



「…ちょっと待って」



三歩前に歩いたところで、なずなに引き留められる。

足を止めて、振り向いた。



「どうした?」

「…ちょっと、事態は変わってきた、かも」



事態が変わった?



「どういう風に?」

「…あの地下には、ヤバいモンが潜んでるかもしれない」

「ヤバいモン?」



ヤバいモン?…ヤバモン?

それは、何だ。



「取り敢えず、ヤバい状況になったら、伶士。走って逃げろ。いいな?」

「…は?逃げる?」

「…あと、これ。室長命令で伶士もつけて」



そう言って、ポケットから取り出したのは、シルバーのイヤーカフ。

なずなも耳に付けている、無線だ。



「………」



その小さなアクセサリーを受けとる。

これが無線になるなんて、世の中って発展してんなーと思いながら、左の耳に装着する。

「こっちの音声は、襟元の校章バッジがマイクになってるから、向こうに伝えたいことはそれで喋ればいい。でも、周りに気付かれないよう気を付けて」