「紘菜、ほんとうにいいの?」
「いーのいーの!じゃあ、私もう行くから!」
「…そう?…気を付けていってらっしゃいね」
「はあーい!」
どこか納得していないお母さんに、これ以上変に気を使わせないように素早くスニーカーを履く。
「いってきまーす」といつも通りのテンションでそう言えば、お母さんはもうなにも言ってこなかった。
白のビックシルエットのTシャツにあわいピンクのミニスカートを合わせ、アイボリー色のキャップをかぶる。
このほうが動きやすくていいし、いつも通りの夏服だからしっくりする。
うんうん、身の程わきまえてるって感じで良いぞ、私。
8月某日、夕暮れ時。
「紘菜ちゃん」
そんなカジュアルな恰好で家を出た私の視界に飛び込んできたのは、軽く右手をあげて私に手を振る三琴先輩の姿だった。