お姉様をタウンハウスに送り届けてから、私は士官学校の寮へ戻った。
 部屋ではすでにフェルゼンが部屋着で寛いでいた。

「珍しい。今夜はご令嬢とユックリしないの?」
「さすがに今日は俺でも疲れる」
「たしかにね」

 私もぐったりだ。髪を解き、ジャケットを脱ぎ散らかして、ソファーに体を投げ捨てて、だらけきる。
 幼年学校から、フェルゼンとはずっと同室だ。唯一、私の事情を知っている彼が、それとなくフォローしてくれるから学校生活が順調でいられるのだ。士官学校のなかで、唯一フェルゼンの前だけが、本当の自分を隠さなくていい場所である。