翌日、あたしは誰よりも早く登校してきている雄大の席の前に立ち、話しかけていた。


「ねぇ雄大。雄大はなにも知らなかったの? それとも、マユちゃんの秘密を知っていたの?」


話しかけても、雄大はまっすぐ前を向いたまま返事をしない。


その視界の中にあたしが入っているのかどうかも怪しかった。


「でも、雄大は悪くないよね。ユマちゃんとナオヤも、ちゃんと和解してくれたはずだったのにね」


呟いて雄大の手を握り締める。


雄大は一瞬身を固くしたけれど、すぐにいつもの無表情に戻ってしまった。


「ユマちゃんの子供のことでイジメに発展したんだとしたら、そんなとばっちりってないよね。雄大、なにも悪いことしてないのにね」


呟きながら、つい涙が滲んできていた。


目の奥がジンッと熱くなって、視界がジワリと揺れる。


涙の粒がひとつ雄大の手のひらに落ちて行った。


ポタリと落ちたその涙を、雄大はジッと見つめている。