「つ……疲れた……精神的に……」

 桜衣は自宅のドアを開け、部屋に入るとそのままフラフラとベッドに倒れ込む。

「もうっ!何なのあの男は!」
 
 ベッドの上に置かれたペンギンのクッションを握りしめながら悪態をつく。
 等身大のサイズ感もペンギン好きの桜衣にはたまらないし、パウダービーズの入った何とも言えないモチモチした感触が気に入っているのだが、握る手に力が入り過ぎて変お尻のあたりがおかしな形になってしまっている。

 家まで送るという陽真の申し出をなんとか振り切って逃げ帰って来た。

(完全にからかわれてた……悔しい)

「再会したと思ったら、いきなり、タメ口聞けとか名前で呼べとか、け、結婚しろ……とか
しかも、挙句の果てに……」

 キス、するなんて。

 あの時と同じように触れるだけの。

「――思い出しちゃったじゃない」