夕方から夜へと変わる薄暗い時間。

今日は、雨模様。

特に見通しが悪い。

勤務を終えた結城葵は、傘を差し会社近くの交差点で信号待ちをしていた。

少し前には、ビニール傘を差した男の人の後ろ姿。

普段なら全く気にしないのだが、何故か後ろ姿に目がいった。

ふと、右に顔を向けた瞬間凄いスピードで走ってくる車に気づいた。男性は気づいていない…

そして、葵は無意識に体が動いていた。

自分の傘を放り投げ、前の男性の手を取り力いっぱい後ろに引っ張った。

濡れた道路に倒れ込む葵と男性。

次の瞬間。

キキーッガッシャーン!!

先程まで男性が立っていた歩道を車が通過しガードレールに突っ込んだ。

「「キャーッ」」と辺りからは悲鳴が上がる。