「エイムズさんは、何らかの感染症で亡くなったことが分かりました」

イギリスのロンドンにある小さな法医学研究所。そこで監察医をしている日本人の女性――菜花 陽葵(なばな ひまり)は、刑事である男性――ジョン・スミスにそう言った。

「……何の感染症か分かるのか?」

スミス刑事の言葉に、陽葵は静かに首を横に振る。

「いえ……そこまでは。何の感染症かを調べるのには、検査時間がかかりますので……」

「そうか」

「……あなた!何をしているんですか!?」

スミス刑事と陽葵が話をしていると、解剖室から陽葵にとっては聞き覚えのある声が聞こえた。何事か、と陽葵は解剖室へと走り出す。

「エリカ!どうしたの!?」

解剖室のドアを開けながら、陽葵は同じ監察医で、仲良しの女性――エリカ・キャメリアの名前を呼んだ。

「……え?」

一瞬陽葵は、解剖室のドアを閉めようかと思ってしまった。見知らぬ男性が、さっき陽葵が解剖した遺体を引っ張り出して、じっと遺体を見ていたから。

「あの……何をしているんですか?」

陽葵が声をかけると、男性はゆっくりと陽葵の方を向く。少し陽葵を観察した後、男性は口を開いた。