3話「チョコレートサンデー」




 「それでは、お時間ある日や時間帯を教えていただけますか?それとも今から追いかけたほうがいいでしょうか?早いとありがたいのですが、ダメでしょうか?それに………」


 菊那が驚きすぎて言葉を失っていると、それを了承したと勘違いしたのか、樹が話しを始めてしまった。


 「ちょ、ちょっと待ってください。あの、まだやると決めたわけでは………」
 「そうなんですか?私はその少年の顔を見ていないので、菊那さんに手伝っていただかないと困るのですが……」
 「それはそうですが、私にも都合というものが………え………っと?」


 何とか言い訳を考えて逃げようと思っていたけれど、フッと自分の腕が冷たくなったのを感じ、そちらに視線を向ける。すると、菊那の左手首に樹の手が添えられていたのだ。いや、がっしりと掴まえていたと言った方が正しいかもしれない。
 菊那は恐る恐る彼を見上げると、バチッと目が合った。樹は怖いほど綺麗な笑みを浮かべて伏せ目がちでこちらを見ていたのだ。


 「菊那さん、逃がしませんよ?」
 「っっ!!」