「暖、そっち行っていい?」

「うん。いいよ」


私、木ノ下暖(きのした のん)。高校2年生。
もう21時だから部屋着でゴロゴロしていた。そろそろかな……とスマホを確認した。

スマホの画面を見て通知がきていることに気づいてタップする。

[ベランダいる]


その送り主にニヤニヤしながら、返信をしてから私はドアを開けてベランダに出た。
右隣を見れば、彼が手をひらひらと降っているのが見えた。


「お疲れ様、礼央。」

「お疲れ〜今日も疲れたわ……充電させて」


この人は、私の幼なじみの上条礼央(かみじょう れお)。
学校では、人気者のイケメンだ。毎日毎日告白されている。
マンションがお隣さんの私たち。だから、いつも行き来をしている……というかやってくる。

普通に玄関からくればいいのにとは言ってるんだけど、いつも『めんどくさい』と言う……塀を乗り越えてくるのは危ないと思うんだけど。

「あ、礼央……これ、また預かったやつ。女の子からだよ、確か佐々木さん」

「なんでもらってくんのー? マジで要らないんだけど」

「だって女子に逆らったら怖い……いじめられる」


幼なじみだからと、私経由で手紙を渡して欲しいからと私に来る。

それをいやだと拒否したら本気でいじめられるに決まっている。
怖くてそんなことできない。