#07 奪われたくない


『帰りますよ』

 色素の薄いサラサラの髪に、真っ白な肌。
 いかにも品のいいお坊ちゃんって感じの小綺麗な私服。

「帰んないし」

 あたし、許可もらってからここに来たわけで。帰る理由がない。

「住み込みで働いているらしいじゃないですか」
「知ってるなら話がはやいよね。急いでるから」

 こうしている間にも遊園地の開園時刻は迫っている。

「どうして働くんです?」
「カンケイないでしょ」

 大地くんは門限あるんだから、ここで足止めくらうわけにはいかないの!

「さっすが美香ちゃんの弟。かなりのイケメンくんだねー?」

 海月さんが、ニコニコしながらモトナリを店の中へと案内する。

「モテて大変でしょ?」
「……いえ。男子校なので、そういうのは」
「うぶだね。かわいい」
「あの。僕は。姉を連れて帰ります」

 "姉"――?

 うちにいたときは、お姉ちゃんって一度も呼ぼうとしなかったのに。

「それはダメよ。今から美香ちゃん、デートだから」

 そうだそうだ。

「デート?」
「うちのバカな弟と」