翌日の朝は、予想通り3日後にやって来る台風についての話し合いが執り行われた。

予定通りの進路と時間であれば、台風が上陸するのは金曜日の夜だから学校は通常通りのカリキュラムとなるが、勢力を大きくして進んで来ているから、早く上陸した時の対応がしっかりと話し合われる。

連絡網の確認や、緊急時の避難の誘導等、もしもの時この島の教師は率先して島を守る側にならなければならない。

自分のトラウマでパニックになってはいけない。僕は、僕じゃなくて子供たちや島の住民を守る側なんだ、と自分に言い聞かせ、冷静に、しっかり、毎年行われるこの時期のこの話し合いに耳を傾けた。


今日の話し合いには職員室の隅の方に猫塚さんと美矢の用務員組も参加していて、毎年のことだけど、猫塚さんは島猫達の避難場所を数箇所確保して誘導するのが仕事になるらしい。

その間の用務の仕事は美矢1人で出来ることをやらせるので、難しい注文はしないでやってくれという言葉に、教諭達の視線が一気に美矢に向く。

その視線に萎縮してひょん、と肩に力の入ったポーズの美矢は「……す」と短く応答していた。