「えー、伊藤先生ですがしばらく入院することになりました。みんなにとってショックな出来事だったと思いますが――」

担任の先生の言葉が右から左へ抜けていく。

伊藤先生は妊娠4か月だったらしい。昨年結婚していたということも今日初めて知った。

お腹の中の赤ちゃんがどうだったのか、担任の先生の口から聞くことはできなかったけれどあれだけの出血があって何もなかったということはありえないだろう。

伊藤先生のことが心配で仕方がなかった。

カスミちゃんは伊藤先生のことを嫌っていたけど、先生は生徒一人一人ときちんと向かい合ってくれる人だった。

課題の提出物にもきちんと目を通してくれたからこそ、カスミちゃんの不正に気付いてそれを正そうとわたしたちを生徒指導室に呼び入れて話を聞いたのだ。

胸が痛む。わたしのせいで先生がカスミちゃんの標的にされ、傷付けられてしまった。

先生と先生の赤ちゃんがどうか無事でありますように……。

わたしはそう心の中で願わずにはいられなかった。