「ない……」

翌日には恐れていることが現実になった。

キリキリと痛む胃を押さえながら登校すると、下駄箱の中にあるはずの上履きがなかった。

辺りや近くのゴミ箱を探してみたものの上履きは見つからない。

仕方なく職員室でスリッパを借りて教室へ向かう。

一歩一歩教室に近付くたびにわたしの心臓は激しく鼓動を打ち、喉がカラカラに乾いていくのを感じた。

このまま回れ右をして家へ帰れたらどんなにいいだろう。

『上履きを隠されたから帰ってきたの』

などと母に言えば、母は『そんなことがお父さんに知られたらどうするの!?私が怒られるのよ!今すぐ学校へ行きなさい!』と怒鳴りつけるに決まってる。

わたしの話など聞かずに自分の保身に走る母の姿が目に浮かぶ。

教室の前に立ち止まり背中を丸めたまま扉に手をかける。

扉を開いた時のクラスメイト達の表情が怖い。

カスミちゃんのことだしわたし以外のクラスメイトにグループメッセージを送っていてもおかしくはない。

中学の時、グループメッセージで【明日からアイツのこと無視ね】と連絡がきたことがある。