今まで、「変わりたい」なんて思ったことはなかった。


いつもどこかで自分のことをあきらめていた。


でもあの時、翠くんがくれた言葉がずっと頭から離れなくて……。


『マジで俺、可愛いって思ってるよ』


私は初めて少しだけ、「変わりたい」って思ってしまった。


鏡の前で、ハサミを手にした私は、意を決して長い前髪を切り落とす。


――シャキン。


目の前には、少しだけ明るい世界。


そこには新しい自分がいるような気がした。