ひとりの部屋に戻り、いつもみたいにソファにジャケットを脱いで真っ先に冷蔵庫へ向かう俺。
京香が大阪の病院に行ってから、一気に部屋の中が散らかった。

散らかっていることが気にはなっても片づけようとは思わない。

片付けることで空いてしまうスペースに、どうしても虚無感を感じずにはいられないからだ。

俺は冷蔵庫を開けていつものようにノンアルコールのビールを手にする。

俺は酒が好きだ。

でも今はのまないと誓っている。
いつ、何があるかわからないからという理由を使ったら、想像もしたくないことが現実になりそうで怖い。だから俺はこのノンアルコールの酒を飲むことに違う理由をつけた。
それは、京香が治ったら、大阪から無事に戻ることができたら、その時は思う存分おいしい酒を飲めるように、今は我慢していると理由をつけることにしたんだ。

冷蔵庫の前でさっそく缶を開けるとひとりの部屋に『プシューッ』と音が響き渡った。