ブラッドのらしくない声に視線を向けた。この女はいったい何を言っているんだと、困惑した表情をしている。
絵本やテレビなんかで見聞きした、中世ヨーロッパの知識を思い出してみる。確か、貴族の女性はふりっふりのドレスに身を包んで、茶会や舞踏会なんて優雅な生活をしているんだったっけ?そりゃあ、剣術をやりたいなんて言い出したら、驚くのも無理ないかもしれない。

もちろん、私だって真剣なんて扱ったことはない。やっていたのは剣道だ。父が長年剣道をしていたこともあって、幼い頃からその姿を見ていた。小学生になる頃には、私も本格的に道場に通うようになり、中学、高校では、全国大会で優勝する腕前になっていた。剣道は、自分の中で一番自慢できるものだった。ただ、父の死や就職をきっかけに、ここ数年は離れていたけど……

「ユーリの国では、女性も剣術を嗜むのが普通なのか?」

「剣術ではなくて、剣道というものです。体に防具を付けて、竹で作られた竹刀という剣のようなもので戦うのです。と言っても、ここのように本当に攻め入ってくる敵に対してではないですよ。スポーツとしてです。敵が攻め入ってくるなんてこと、考えたこともないような世界ですから」