淡いベージュとブラウンのツートンがひと目を引くセレクトショップ『クリエーニュ』は、駅に近い通りに面した場所にある。当初は商業ビルに出店していたが、カフェだった店をリノベーションし、そこに越してから五年が経過した。

オフィスビルも近くにあり乗降客が多い駅のため、朝早くから人の往来は激しい通りである。おかげで近隣のオフィスに勤める女性はもちろん、クリエーニュを目当てにこの街を訪れるお客も多数だ。

昨夜、美紅は一慶のリクエストで炊き込みご飯を作り、二合炊いた炊飯ジャーは空っぽに。イタリアでも和食を食べるのは可能だろうが、相当飢えていたらしい。『おいしい』と連呼しつつ一慶が食べる様子に美紅の心は弾んだ。

ひとつ屋根の下で過ごすはじめての夜だったが、当然ながらその後はなにも起こらず。お風呂に入ってそれぞれの部屋にこもり、そのまま朝を迎えた。

妹扱いなのだからあたり前だが、どことなく落ち着かなくそわそわしていたのが恥ずかしい。
緊張していたせいか今朝は早く目覚め、まだ眠っている一慶の分の朝食を準備して先にマンションを出た。

てっきり一番の出勤かと思いきや、店の奥にあるスタッフルームには佐和子の姿があった。


「おはよ、美紅」