EFアンサンブル本番、当日。

私はヒロインをイメージしたブルーのドレスを身に纏い、会場入りする。

今日は午前中にリハ、午後に本番。

ついでに言うと、明日はソロ本番。

リハ15分前、私は奏先輩を見つけた。

どうしよう。

すごくかっこいい…

奏先輩は、作中に出てくる生き物をイメージして、赤のサテンシャツに黒のパンツ、黒の細いネクタイを身につけている。

街中で見れば、派手で人目をひく姿だが、エレクトーンの発表会やコンクールでは、割とありふれた格好。

なのに誰もが目を奪われるのは、奏先輩のスタイルの良さが原因だと思う。

一年前、出会った頃は170㎝を少し超えた位だった奏先輩だけど、この一年でさらに伸びて、今では間もなく180㎝に届こうとしている。

その上、すごく綺麗な顔立ちをしてるんだから、見知らぬ人に見つめられてしまうのは仕方ないのかもしれない。

………しれないけど、奏先輩をみんなの視線から隠して独り占めしたいと思う私がいる。

今まで、こんなこと思ったことなかったのに。


私が奏先輩に気づくと同時に、奏先輩も私に気づいてくれた。

人混みをかき分けて、こちらにやってきてくれる。

「美音、おはよ。」

「おはようございます。」

「頑張ろうな。」

「はい。」

私たちは、客席でリハの順番を待つ。

年齢の小さな子からの出場順。

私たちは、後ろから2番目だ。


リハの順番が回ってきて、私たちはステージに上がる。