取り損ねたブーケに、莉子が心底がっかりしているとわかっていた俺は、

「それだけ、幸せを分けて欲しかったんだろ。俺が側にいるんだからブーケが取れないぐらいで目くじら立てるなよ」

と、慰めるしか出来なかった。

今はまだ、約束できない未来の代わりに…

親友の絵梨花ちゃんも渡部に孕まされて、できちゃった婚をし、今日は、梶岡とその嫁の結婚式。

何も言わない莉子が、自分のことのように喜んでいる笑顔の影で、何を思っているかなんて、想像できるほど、あいつを愛してる。

愛していても、まだ、踏み切れない俺には、莉子が欲しがる言葉をかけてやることができない。

だから、中途半端に半同棲なんかしている。

今も、新婦の側で羨ましいそうな顔で無理して笑っている。

「朝陽は、莉子ちゃんとしないのか?」

「一緒にいるだけじゃダメなのか?結婚にこだわる意味がわからん。お前は、同棲して子供まで作って結婚まで計画を実行したが、そこまでして結婚するメリットってなんだよ」

「アーァ、それ絶対に、莉子ちゃんに言っちゃいけないやつだからな。絶対言うなよ。結婚のメリットなんて俺もわからん…ただ、俺は、絵梨花が俺から離れる可能性を阻止したかったからだな」