ケータイ小説 野いちご

私に恋する可能性

番外編
その1

犬飼side



「犬飼先生!晴れて多岐くんと両思いになりました!!」


律儀にそう報告してきたのは間部ひなた


ちょっと変わった俺の生徒


両思いねぇ

俺からしたら結構前からそんな感じだったけどな



まあ…そうなったなら


もうこいつが俺を一番に頼ることはなくなるか



「よかったな」


「はい!いろいろ話聞いて下さりありがとうございました!」





ニパッと笑うこいつの笑顔はいつも変な気分になる


「はいはい、くれぐれも男には気を付けろよ」


「大丈夫ですよー!」



俺が教師という立場にいる限り

間部にとっては永遠の『先生』なわけで

それ以上にも以下にもならない


…別になりたいわけじゃないけど



ただまぁ…


もしも俺が今 高校生だったら…多分結末は変わってた

てか、意地でも変えてた



柄にもなく


この1人の生徒を特別に感じてしまった


一瞬たりとも、『俺だったら』って考えてしまった



どうやらこの立場になって…まさかの教え子に


割と真面目に恋をしたらしい


盛大なため息を溢す


「うわっなんですか先生、幸せが逃げますよ」


「…んーなんでもねぇ」


手助けなんかしなきゃよかった

別れりゃよかったんだ


なんて後悔したとこで

多分この記憶があるまま時間が戻ったとしても

俺は結局、こいつらが両思いになれるようにするだろう


だけど多岐だけがいい思いすんのは尺だなぁ

なんて(笑)


「なぁ間部」


「はい?」


「多岐に泣かされたら言えよ」


「えー!ふふ、なんですかそれ」


クスクスと笑う間部の頭にぽすっと手をおく


俺がこんなことすんのはお前だけだけど

こいつ絶対気付いてないよな



「多岐に油断禁物って言っとけ」


「はい?」


振り返らないようにしてその場を離れる


はぁ


女には困ってこなかったけど

ちょっとこれは想定外だったな


髪の毛をくしゃっとかき上げる



「あ、犬飼さん」



「どーも」


間部と別れた後、数学の教科主任と鉢合わせた

手にはタバコの箱を持っている


「犬飼さん吸われましたよね。よかったら一服どうですか?」


あー…



ーー『体に悪いですよぉ!』







「いえ、今日はやめときます」




< 266/ 270 >