ケータイ小説 野いちご

私に恋する可能性

8話 欲
多岐side

多岐side


「…多岐遥」


放課後の教室


差し込んでくる夕日があったかくて眠りについていた俺にかかる優しい声色


俺の嫌いな俺の名前を呼ぶ声


『多岐遥』


…なんだ


案外いい名前かもしれない


彼女が発した自分の名前は今まで聞いたことないくらい良い名前に思えた



「…何?間部ひなた」


…俺の

好きな人らしい


人より茶色い髪がひなたの表情が変わるたびにふわりと動く


その髪に触れたいと思った


最近の自分の感覚が激しくおかしい


こんなこと考えたこともなかったのに

ひなたの前だと今まで感じた試しのない欲がでてくる



会いたい、触れたい、抱きしめたい、キスしたい


あーやっべぇ


恋ってこんなもんなの?


俺がおかしいの?


理性って難しい…



寝込みを襲いに来たの?なんて冗談で言ったら


『うん』なんて頬を赤らめて言われるもんだから


ごくっと何かを飲み込んで冷静を装う



「なんで呼んだの?」


なんでも何も…

え、なんで呼んだんだろう


特に理由がない



いや…多分


「会いたかったから呼んだ」


それだけだと思う


好きなんだったら会いたいって思うだろ?


連絡先の交換だってしたのに

ひなたから連絡きたことないよな


眺めるだけで満足とか言ってたけど、俺が満足じゃねぇんだよ


「ひなたは俺のことが好きだっていう割には欲がないよね」


「え?」


「会いたいとか触れたいとか、他の奴に触られたくないとか」


思うだろ?


なんでカフェ来た時俺が女の中に埋もれてても何も言わなかったんだよ


ちょっとくらい妬いてくれるんじゃって思ってた俺が馬鹿みたいなんだが


むしろクソ茂木のせいで俺が…



あーっ思ったようにいかない




もっと欲しがってよひなた



…なんて口が裂けても言えないけど



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