ここにきて数日、いろいろなことに慣れてきた。まだ体調が優れないということで今日も学校を休ませてもらい劉磨さんとお留守番。


「劉磨と2人なんて危ないよ!僕も残る~。」
「奏が残ったら花月が気疲れする。ほら、いくぞ。」
「花月~。」

「いってらっしゃい…家で待っていますね……。」
「学校終わったらすぐ戻ってくるからね!」

「そろそろ出ないと遅刻しますよ。」
「じゃあ、いってきますね。」

朝から大騒ぎ…うるさいと思っていたのに今は当たり前になっていて……いなくなってしまうと寂しいと思うのは、何でだろう……。
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――2階廊下――

深呼吸をして心を落ち着ける。私は別に彼を心配しているわけじゃない…心配してるわけじゃない…でも……

コンコンッ

ノックをしたが中からの反応はない。劉磨さん、まだ寝ているのかな…。最後に顔を見たのは血を吸われた日。少しの罪悪感はあったけれど体調が気になるから勝手だけど部屋に入らせてもらった。


「失礼します…。」


ベッドにはスースーと寝息を立てている劉磨さんの姿があった。


元気そうでよかった…。あ、劉磨さんペンダントをしたまま眠っている。苦しくないのかな……。

そっと寄り添いペンダントに手を当てる。

「触るな!」

手を勢いよくはじかれた。痛くはなかったけれど、突然のことに驚いた。


「花月…。」
「体調、大丈夫ですか……?」

「…お前のおかげで安定している…。」
「そうですか…それならよかったです。」

「なんで怒らない…?」
「怒るって…?」

「俺はお前を殺しかけたんだぞ。それにお前の血の匂いを学校全体に広めてしまった。なんで、俺のことを責めないんだよ。」

「劉磨さんに血を吸わせたのは私です。それに…あのとき何か力になりたいと…思ったんです。自分でも何であんなことしたのかよく分かりません。でも、もう誰かを失うのは怖いから……。」


「そうだよな…。大切な人を失うことは怖い。何もできない自分がいることも…。」
「劉磨さんの…皆さんの恐怖は……やっぱり柚さんですか…?」
「なんでそう思う……?」

「なんとなく…です。柚さんという言葉をきっかけに、この間から皆さんの様子が変だから…悠夜さんに聞いても何も…教えていただけなかったので何かあったんじゃないかと思ってしまって…。」

「俺らの中で“柚”は禁句なんだ。柚はお前が来る前にいた奴の名前。3年前、とあるパーティーで出会った。」